六月の花嫁
六月の花嫁は幸せになるってのは
ブライダル業界の陰謀なんだって
案の定今日も
お日和もよい土曜だってのに
予報では雨のところを辛うじて
表面に水滴を湛えそうな湿度を保った曇り空
花嫁の肌は沸点ぎりぎりのうるおいをまとい
花婿の髪は清冽さを失い寝癖が蘇生する
招待客は持っていきたくない傘の心配をして
上司は挨拶の頭言葉を急いで差し替える
そんなこと言っても天気まではコントロールできないんだから致し方ない
日本の六月は雨降りと昔から決まっているのだもの
それでもいいのだ関係ないし
カラリと晴れた美しい青空の下でなくたって
永遠の愛は誓えるし
二人の門出が晴れがましいことに変わりない
やきもちやきなお天道さまが邪魔だてしたって
ジューンブライドがだれかの陰謀のうそだとしたって
あふれんばかりのしあわせと
輝かしい未来への限りない希望は
変えることなんてできやしない
そんな強靱な気概を抱いて
華奢な彼女は今日ヴァージンロードをゆく
だいじょうぶ
あんたならしあわせになれるよ
遠くからオメデトウを送るよ
世の中の意地悪なんてものともせずに
高らかに笑いながら切り拓いていくMへ