そうだったんだった。
昔だれかに言われたんだった。


苦しかったことや辛かったことは
どれだけがんばっても
その時とまったくおなじ感情を思い出すことはできない。
それが人間が進化の過程で得た「忘却本能」なんだよ
と。



だから私はどうがんばっても、
一番辛く苦しかったところをどうやって乗り越えたのか
思い出すことができない。


一生懸命考えるんだけど、
どうすればいいのか、何をしたらいいのか、
皆目見当がつかない。



ただじたばたしてぐったりして、
時間の偉大さと無情さを再確認するしかできない。



私以外の人はだれもがすんなりスマートに生きているんだ、
なんて思ってるわけじゃないけど、
どんな人だって一度は泥のように底なしに落ち込む、
なんてことは紙でできた城のように嘘みたいに感じられて、
いつだって自分の痛みだけで精一杯だ。