理想とかロマンとか

♪足ーもとに〜からみーつく 赤いー波を〜蹴ーって〜
生きていけたらいいのにな、と
思う男の子が主人公の話があったな、と
そんな古いうた私だって知らないんだから、
今ドキの中高生が知るわけないでしょ、と
劇中劇のナレーションみたいなことを
ふと思って外を見やれば目黒川は突風に桜散るちる。
そして携帯バッテリーは完全に消耗ギリギリ。


耳につく音楽がからだの芯をふるわすように、
風も空気も匂いも色もまた、
どこかしらの器官を通じて心(シン)の芯の部分に
影響を及ぼしているにちがいないのでしょう。


陽光に春を織り込んで瞼の裏に焼き付いた面影を、
どうひっぺがしてまるめて捨てようか。
八重に十六重に重なり合って枝垂れる花が
小憎らしくも蕾を染めゆく。


明日の対岸に昨日があるなら
サッパリとしたものだったのに、いつのまにか
昨日の延長に明日があることに気付いてしまった。
白く眩しい光の中で
目は開けられないけど手探りで、
積み重ねの先の明日を掴んでいく。