清々しい朝(後悔ver.)

ここ何ヶ月か朝よく目に留まるのは、ゴミ拾いをする商店街の若い人。たぶん美容師さんではないかと思う。お店の前だけではなく、ほぼ歩道のようになっているメインストリートの狭い車道で、ゴミ袋とシルバーの名前のわからないゴミはさみを手に歩いている。
 
そこをいつものように、でもいつもとはちがう気持ちで急ぎ足で抜けていく。
 
朝のこの街の整頓された雰囲気は好ましい。ちょっと間延びした生活感と、その中でできる範囲の快適さをみんなで作り共有している。なにより冬の朝が似合う。白い陽光ときりりとつめたい空気は、ちいさな充実を控えめに大切にしている街を、より素敵に見せるせい。
 
昨夜の痛飲にもかかわらず、頭痛の不在はきっと、オーガニックを選んだから。
 
自転車が脇を走り抜けて行って、いつものお花屋さんが開店するところに通り掛かる。はなやかにというよりにぎやかにお店の前に並べられた、たくさんの鉢やバケツや季節の飾り物たちはすっかりクリスマスの装い。
 
帳に置き去りにした白くて小さな愛車はまだあの角にいてくれるのか。
 
一年でいちばん好きな季節の到来に、心はしずかに色めきだつ。黒のスタンドカラーをしっかりと立てて、前のめりに進むと、となりに冬将軍の息遣いを探す。今日はまだあたたかいから、街を行き交う人たちの表情は柔和で、今日はウィークデイではないような気さえするほど。確かに商用の車の数も少ない。
 
一つ確かなことは、奴が要らないからほかの人に押し付けたんではない。
 
自転車置き場のおじさんは朝から快活で、一日なら百円で預かってくれる。少し話好きで急ぐ朝には手間だけど、親切に一階の空いたスペースに停めてくれる。撤去されることなく待っていてくれた自転車を、ちゃんと預かってくれるところに置いて出勤するのは、なんだかすがすがしい気分になった。
 
やはり後悔はしていないけど、昨日の夜は泣いちゃったから失敗だ。