荒筋は大抵気に食わない

買ったその日に読了するなんてよくある話で、
買ったまま読まずに放置、っていう本のほうが少ない。


読みたいと思った本をネットや雑誌やメディアで見つけると、とりあえず携帯メモにリスト化することにしていて、昨日そのリストは更新したばかりだったのだけど、とにかく書店を歩き回り始めてけっこうすぐにその本を見つけた。このリストは無作為、無分類だから、一冊探すのにも店の中を二巡三巡しないといけないのが常なのだけど、それはつい最近新訳されたか新装丁されただかで、平積みされていた。すぐに手にとったものの、まだ時間はあるし、「永遠の青春小説」なるコピーが巻き付けられていて、それには若干ゲンナリした。本当は更新したばかりのリスト最上部にある本を探すつもりだったのだけど、インスピレーションとか縁とか、そういうものに惑わされるのは嫌いじゃないから、これもひとつの出会いと納得。


本の作りは、至ってシンプル。というか、まるで作文や小論文のお手本みたいだ。タイトルがあって、その説明が冒頭にあって、ところどころでもそれが引用されて、ラストもそれで締めくくられる。わたしならこれを青春小説とは、決して評させないなと、何度も思いながら読み進んだ。昔観た「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいな展開にはちょっと不意打ちだったけど、主人公の塞き止められない感情の波に押し流されるように頁を繰った。ラストはちょっと優等生みたいに綺麗にまとめすぎだと、正直思ったけど、読後感は爽快だった。途中で一旦奥付と初出を確認して、合点がいった。あの時代にこれを出すということは、きっとセンセーショナルとまではいかなくとも新鮮で、読者は貪るように読んだに違いない。


幸福や勝利は、自分の手で掴み取るべきものだと信じて疑わないこと。その姿勢を眩しくも少し疎ましくも、そして楽観的にも感じてしまうのは、時代のせいも少しはあると思う。


それでもやっぱり、元気はもらった。
縁ゆえの本との出会いも
悪いもんじゃないなと思った。