閉じて篭る

静かに冬眠の準備が始まりました。


…生き物を飼ってるわけぢゃなくて。
心が徐々にユルユルと扉を閉じ始めています。
刺激を緩和して、
ひだを動かさないように、
ビリビリと高感度だったアンテナを縮めて、
感情の振れ幅が大きくならないように。
食べる方はさほどでもないけど、
映画や本、音楽を吸収してため込んで、
服とか靴とか買い込んで、
新しく揃え直すとこは直して、
欲しいもの、必要なもにはすぐ手が届いて
煩わされることのないように。
慎重に、でも確実に、
冬の到来に向けて準備しています。


残念ながら、
人間で大人で、かつ社会人なので、
リアルに引き篭もったり冬眠したりするわけにはいきませんが、
過敏に俊敏に、
感情的に広く反応することは少なくなります。


それが証拠に、
すでにもろもろが「箱の中」(江國風)です。
好きかもと思った人も、
他には渡したくないと思ったものも、
心乱された存在も、
引き裂かれそうなほど淋しい夜も、
捨て切れない思い出も、
弾けそうに楽しかった夏も、
会って酌み交わしたいあの人もこの人も、
ほぼほぼすべてが「箱の中」です。


変わらずくすぶるように在り続けるのは、
夢への推進力と、
付かず離れず心地よい感じの関係だけです、
…いまのところ。


それでもこれから、
寒さが極まるごとに
一箇所だけ研ぎ澄まされていく部分があって、
そこはとても強く細く、尖端的でやわらかい。
そこの感度をあげるために、
もしかしたら冬眠の準備に似た行動を
無意識のうちに取るのかも知れない。
だとしたら、
農業でいうところの二毛作的なものかしら
と、思う。
自分の中の同じ場所でちがうものを二毛作
…どちらにせよ、
冬へととじてとぎすますシーズンの到来です。