根無し草のブルース

低いオレンジの月が横目で見下ろす熱帯夜、
ぶらぶらと帰途を辿るなかふと気づいた。
 
わたし どこにいても 
根っこを生やさないように気をつけていた
根付かないよう、根付かないように
細心の注意を払って…
 
どんな場所にいたって
その街に馴染まない、馴染めないストレンジャーで通りすがりの気がしていたけど、
それはたぶん自分自身でそう仕向けていた。
 
傍観者でいる心がけと、通りすがりでいる成り行きは、紙一重ではなく裏表だ。
 
 
節目節目に計画を立てて、それに追い立てられるように生きるのはしんどいけど、
命の残り時間を把握して取捨択一することは重要だ。
あとどれだけの間に、どれとなにを達成したいのか。
柱に背丈の疵を残すように、
メモリアル・モニュメントを後ろに進んでいくのは好きだ。
振り返った時に目印になる。
ほんとうは目印なんて要らないのだけれど。
役に立たない無駄なもので感情をゆさぶるのは、
自己完結で目立たないけど続けて行くのためのナセシティ。
 
でもそろそろ句切をつけていかなくては。
たゆたって滞って澱んでしまうから、
流されるように生きていくことはわたしにはできない。
おなじ流されるでも、となりの流れ、次の河へと、
自発的に跳び移って移動していかなくては。
 
わりと耐性と惰性には強いほうだけど、
(他人に呆れられるほど一つのことをルーティンとして続けられるし)
そろそろ。さらさらとした流れから未踏の地へ。
ずっとおなじ人にこだわっていることにも飽きたし、
自分を一つの型にはめる尽力にも飽きた。どれも楽しかったけどね。
 
 
根。生やしたいと思う。
「ここが私の場所だ」と言い切れるような
ちっさな誇りをもって守りたいと思えるような、
自分の内側と深くリンクする場所を、本気で見つける。
もともと職人気質だからさ。
場所は一つあればいいんだよね。
ふらふら放浪するのはガラじゃない。