一週間以上消えない

今年こそは書き出さないようにしようとひそかに決めていたのだけれど、
一週間以上もずっと、いつもより気まぐれな気温に延ばされ、
街の至るところで漂いつづける金木犀の香りにかき乱される。
 
 
例の詩の暗唱は例年のごとく行いましたよ。
それでも足りない、と軋むこの動機に気が狂いそう。
気のせいのはずの残り香がいつまでも香る気がするように、
嗅覚の思い出とともにいつまでも記憶から消せない日がやってくる。
今年は日本を離れられるだけ、時差の谷間にうやむやにできるだけ、マシかも知れない。
 
どの腕でもいいからすがりたいような泣き出したい気分に突然なるのは、
きっといま自分であの時の傷をえぐっているから。
自傷行為なんて柄でもないし関心もないけど、
心の内側では確信犯で繰り返しているのかも。
「一生会えない」遣る瀬無さと、「一生付かず離れず」のケロイドだと、
どっちがマシでどっちが意義があるんだろう。
人の脳は「覚える」より「忘れる」ほうが難しいって誰かが言っていたけれど、
きっと心底お互いを傷つけ合うほどの本気で向き合ってはいなかったから、
こんなふうに中途半端な記憶に惑わされたりするんだろうね。
 
こんな面倒くさい自分はだいきらいだ。
今年ははやくこの季節が行き過ぎればいいのに。