世界が包まれたなら

待ちわびた花の香りに包まれて、おだやかな光ときりりと冷たい空気があふれる秋の朝が好きだ。つい夜長に乗じて夜更かしをして、ぬくもりの中でぐるぐると遅起きの贅沢を堪能したいところなのだけど、綺麗な時間が残っているうちに外へ出たくなる。わざと遠回りをして、香りをたどって、知らない道を発見して。この季節はいつも楽しくて仕方がない。

最近ずっと電車のお供だったのは、前々から気になっていながら最近ようやく手にした橋本治恋愛論」。予想に反して、なんと講演の書き起こしで、正直言って読みにくいことこの上ない。ないのだけれど、慣れるとどうして気にならなくなるというか寧ろ語り口調まで想像して読んでしまうから不思議だ。内容は自身が文中でもはっきり明記しているように、「セックス論ではなく恋愛論」だから、人とのコミュニケーションやそれにともなう心の動き、さらに男女間ギャップの話。恋する男性を天使と評するのはどうかと思う(完全に宗教画的いわゆるエンジェルを想像してしまうから)が、男の人を恋愛対象として捉える男の人からの、女性主観的恋愛観へのダメ出しは面白かった。いろいろと目から鱗。そして著者の意図はきっと叶っていて、なんだか安堵しました。与えたいと思ったものを、ちゃんと受けとったという満足感。そういうコミュニケーションが確かに最近世の中に不足している。

ちなみに今の秋の夜長の楽しみ方は、ダラダラしないように気をつけながら、でも少量のワインを時間をかけて家で少しずつ嗜むこと。ダラダラしないのは、酔いすぎないようにと、朝ちゃんとスッキリ目覚めたいから。飲みながら仕事ができる程度に理性を保ちつつ、仕事だけじゃなく、DVDで映画を観たり、終わりの見えない部屋の雑多な小物だちを片付けたりしながら、秋の子どもたちが楽しそうに跳ね回るのを喜びながらこっそり観察しているのです。Viva Autumn☆