真夜中のラブレター

あのひとにあいたい。
いまのじぶんで、
あのころのあのひとに、
もういちど。
もういちどだけでいいから。


懐かしいひとひらの写真。
くやしいくらい忘れられないあの人。
あの寝顔にこっそりシャッターを切った
青臭くてださいハタチそこそこの自分。
内心バクバクだった心臓の音まで思い出した。
無防備で疲れてて、
でも息遣いまで聞こえてきそうな寝顔。
くっきり閉じられた瞼。
遮光じゃないカーテンごしに
透けてかかる薄暗い朝の光。
胸が痛くなるから思い出さないようにしてたあの部屋。


なんでいま出てくるんだろうね。
なんで鮮明に思い出すんだろうね。
ほんとはちょっと、前兆はあった。
友だちとの遠距離電話で。
ひょっこり読み返した昔の日記で。
「忘れるな」といわれた気がした。
そんなわけないのに。
そんなわけないのに。
そんなわけ、あるはずないのに。