晩冬雑感

消え残った雪が、あまり陽の射さない細い露地で、白さを主張して、こんもりと凍っている。
久方ぶりに都心に積もった雪は、交通機関を麻痺させるでもなく、ただすんなりと何事もなかったかのように、底冷えするつめたさだけを置いていった。
 
ふと窓が開いて白い手が伸びると、外気のつめたさを確かめるように、二秒ほど宙で静止すると、すっとまた引っ込んだ。
 
雪雲の去った空は、低気圧が西から近づいていることを忘れさせるように、広く透明に晴れ渡っている。冬バレはアッパレで気分もハレる。
 
 
日本の心地好い冬が終わる。
 
立春をすぎて積もった雪は最後の猛攻。あとはただ三寒四温にぬくもりを取り戻していくだけ。
 
 
そろそろ閉ざしていた心を開放して、逆にゆるんだ身体を締めていかなければ。新しい季節は、毎年律儀に繰り返しているようで、本当は同じものなんて、ひとつもない。風も花も虫も雨さえも、毎回新しい生命の宿る輝きなのだから。
 
 
落ち着いている心持ちは満ちていく月とともに……。新年最初の満月がいよいよやってきます。